CVE-2026-56269 Flowiseのデフォルト弱秘匿設定による情報漏洩リスク AI Security対策ガイド

結論
- 危険度: Medium (CVSS 4.6)
- 対象: flowise <= 3.0.13
- 修正: 3.1.0
- KEV: No (NVD Critical由来。CISA KEVには未登録)
タイトルの緊急度プレフィックス(【至急】【最重大】等)の意味
| 表記 | 条件 | 意味 | 対応目安 |
|---|---|---|---|
| 【至急/ランサム悪用】 | CISA KEV登録 + ランサムウェア悪用観測 | ランサムグループが現在進行形で悪用 | 本日中に対応開始 |
| 【至急/重大】 | CISA KEV登録 + CVSS 9.0以上 | 実世界で攻撃観測あり + スコア極めて高い | 本日中に対応開始 |
| 【重大/KEV登録】 | CISA KEV登録(CVSS低またはNVD未反映) | 実世界で攻撃観測あり | 数日以内 |
| 【最重大】 | CVSS 9.5以上(KEV未登録) | 理論上の危険度ほぼ満点、攻撃観測はまだない | 1週間以内に対応計画 |
| 【重大】 | CVSS 9.0〜9.4(KEV未登録) | Critical帯の理論的高リスク | 1〜2週間以内 |
| 【高】 | CVSS 7.0〜8.9(KEV未登録) | High帯のリスク | 計画的に対応 |
| (プレフィックスなし) | CVSS 7.0未満 | Medium以下のリスク | 通常メンテで対応 |
「至急」と「最重大」の違い: 「至急」は CISA(米国政府機関)が 実際に悪用を観測した CVEに付与されます。「最重大」は CVSS スコア上は最高峰だが、まだ悪用観測がない ものです。同じCVSS 9.8でもKEV登録の有無で扱いが変わります。
最終更新: 2026-06-24 | 本記事は公式情報をもとに作成しています。最新情報はベンダー公式アドバイザリを必ずご確認ください。
| STEP | やること | かかる目安 |
|---|---|---|
| STEP 1 | 何が起きているか理解する | 3分 |
| STEP 2 | 急ぎ対応すべきか判断する | 3分 |
| STEP 3 | 自分の環境が対象か確認する | 5分 |
| STEP 4 | 修正を適用する | 環境による |
| STEP 5 | 修正されたことを確認する | 3分 |
STEP 1: 何が起きているか
一言でいうと
CVE-2026-56269は、Flowiseのバージョン3.0.13以前の脆弱性です。攻撃者は初期設定の弱い秘密鍵を知ることで、ユーザーやワークスペースの識別情報を読み取ったり改ざんできます。LLM Gateway運用者にとって優先的に対応が必要な問題です。
やさしく説明すると
この脆弱性は、玄関の鍵が簡単に開く合鍵みたいなものです。Flowiseがユーザー情報を隠すため使う「鍵」を、自動的に「Secre$t」という簡単なパスワードにしています。悪意ある人はそれを知って、隠されたユーザー情報をのぞいたり、勝手に書き換えたりできます。本人確認は別で行われるためそのまま侵入はできませんが、内部情報が漏れることで、あとで権限を盗む手助けになります。
技術的な原因
この問題はCWE-798「使用されているハードコードされた秘密(Hardcoded Secret)」に分類されます。つまり、秘密鍵やパスワードをソースコード内に固定値として書いてしまう設計ミスです。
FlowiseはJWT(JSON Web Token)トークン内のユーザーIDやワークスペースIDをAES-256-CBC暗号方式で暗号化しています。この暗号鍵は環境変数TOKEN_HASH_SECRETから取得しますが、設定されていない場合は弱い初期値「Secre$t」を使います。攻撃者はこれを知ることで暗号の解読と改ざんができてしまいます。
影響を受けると何が困るか
- APIキーや認証情報の直接漏洩はないが、内部ユーザーIDやワークスペースIDなどが盗まれる
- JWTトークンの「meta」情報を復号し、悪意ある改ざんが可能で権限昇格や不正アクセスにつながる
- AI GatewayやAgentフレームワークのセキュリティが弱まるため、運用者にとってリスク増大
- LLM ProxyやAgenticなシステムで不正なユーザー情報利用によるセキュリティ破壊が起きる可能性
- バイブコーダー開発者が使うCursorやCopilot経由での認証トークン管理に悪影響を及ぼす恐れ
もっと詳しく調べたい人へ — 公式情報源マップ
本記事は以下の公式・準公式の情報源から内容を集約しています。一次情報を確認したい場合や英語で詳細を読みたい場合は、各リンクから直接アクセスできます。
| カテゴリ | 情報源 | 言語 | 何が分かるか | リンク |
|---|---|---|---|---|
| 総合 | NVD(米国 NIST) | 英 | 米国政府の脆弱性データベース。CVSSスコア、影響を受けるCPE、参考リンクの総合ハブ。最も網羅的。 | 開く |
| 総合 | MITRE CVE | 英 | CVE採番機関の公式記録。CVE記述の「正本」。NVDより記載が簡潔だが一次情報。 | 開く |
| 総合 | JVN iPedia(JPCERT/CC・IPA) | 日 | 日本のCSIRTが運用する脆弱性対策情報データベース。日本語で概要・対策が読める。掲載がない場合あり。 | 開く |
| 総合 | CISA KEV(悪用観測カタログ) | 英 | 米国CISAが実際に悪用を確認している脆弱性のカタログ。掲載されていれば最優先で対応。 | 開く |
| 総合 | GitHub Advisory Database | 英 | OSSパッケージ(npm/pypi/maven/composer/go等)別の脆弱性アドバイザリ。修正PRへのリンクが豊富。 | 開く |
| 総合 | OpenCVE | 英 | 複数CVEデータベースの集約検索サービス。タイムラインや関連CVEの俯瞰に有用。 | 開く |
| Linux | Red Hat CVE | 英 | Red Hat製品(RHEL/CentOS Stream/Rocky/AlmaLinux系)の影響評価とパッチ状況。 | 開く |
| Linux | Ubuntu Security | 英 | Ubuntu の影響評価。各Ubuntuバージョン(22.04/24.04等)でのパッチ提供状況が一目で分かる。 | 開く |
| Linux | Debian Security Tracker | 英 | Debian の影響評価。stable/testing/sid別のパッチ状況。Debian派生ディストリ利用者向け。 | 開く |
| Linux | SUSE CVE | 英 | SUSE Linux Enterprise / openSUSE の影響評価とパッチ状況。 | 開く |
| 悪用 | Exploit Database | 英 | 公開エクスプロイトのアーカイブ。検出ツールやペネトレーションテストでの参照用。 | 開く |
| 悪用 | Packet Storm Security | 英 | セキュリティアドバイザリ・エクスプロイトの集約サイト。古めの情報も含む。 | 開く |
| 悪用 | GitHub PoC 検索 | 英 | GitHubコード検索でCVE IDを直接検索。野良PoCの早期発見に。 | 開く |
| 悪用 | X(Twitter)検索 | 日英 | 直近の議論やニュースを観測。In-the-wild悪用の早期検知に有用。 | 開く |
| スキャナ | Snyk Vulnerability DB | 英 | パッケージ別の脆弱性詳細と修正バージョン。OSS依存ライブラリ追跡に有用。 | 開く |
| スキャナ | Tenable(Nessus) | 英 | Nessusスキャナでの検出プラグイン情報。検出ロジックの参考に。 | 開く |
| スキャナ | Rapid7(Metasploit/Nexpose) | 英 | Metasploit悪用モジュール、Nexposeでの検出情報。 | 開く |
掲載しているのは無料でアクセスできる情報源のみです。CVEによっては掲載がないサイトもあります(特にJVN iPediaは日本国内で報告された脆弱性のみ掲載)。
STEP 2: 急ぎ対応すべきか判断する
結論: 中
判断根拠
- CVSS v3.1スコアは4.6(Medium)で、中程度のリスク。攻撃条件が限定的で、攻撃元はローカル環境から高い権限が必要。さらにユーザ操作が必要です。
- EPSS(悪用予測スコア)は提供されていません。
- ランサムウェアによる悪用は確認されていません(Unknown)。
- 公開されたPoC(Proof of Concept)コードはありません。
- 攻撃は初期設定の弱い秘密鍵を知った場合のみ可能です。ネットワーク越しに悪用されにくく、設定ミスが前提となります。
誰が動くべきか
- Flowiseを使っているLLMアプリケーション開発者、特にAI GatewayやLLM Proxyの運用担当者
- Agent FrameworkやRAG(Retrieval-Augmented Generation)パイプラインの保守者
- バイブコーダー開発者(CursorやCline、GitHub Copilot利用者など)で、自環境にFlowise経由のサービスがあれば注意
- MLインフラ担当者でFlowiseを組み込んでいる場合
STEP 3: 自分の環境が対象か確認する
影響を受けるバージョン
| 製品 | 脆弱なバージョン範囲 | 修正版 |
|---|---|---|
| Flowise (npm package) | 3.0.13以下 | 3.1.0 |
バージョン確認コマンド
Node.js/npm
npm list flowise
出力例:
flowise@3.0.13
判定: バージョンが 3.0.13 以下なら脆弱。3.1.0 以上なら安全。
Node.js/pnpm
pnpm list flowise
出力例:
flowise@3.0.13
判定: バージョンが 3.0.13 以下なら脆弱。
設定確認
この脆弱性はTOKEN_HASH_SECRET環境変数が未設定の場合に初期値「Secre$t」を使う設計上の問題です。そのため、TOKEN_HASH_SECRETを適切に設定していれば影響を低減可能です。
しかし本質的には環境変数設定だけではなく、脆弱なバージョンのFlowiseそのものが問題です。設定が正しくてもバージョンアップが推奨されます。
Nucleiテンプレートでの検出
本脆弱性の公開Nucleiテンプレートは提供されていません。バージョン確認による検出を推奨します。
STEP 4: 修正を適用する
パッチ適用
Node.js/npm 環境の場合
npm install flowise@3.1.0
判定: アップグレード後バージョンが 3.1.0 以上で安全。
Node.js/pnpm 環境の場合
pnpm update flowise@3.1.0
判定: アップグレード後バージョンが 3.1.0 以上で安全。
注意: パッチ適用前に必ずバックアップを取得してください。影響範囲が広い場合はステージングで動作検証し、本番環境のダウンタイム計画を立ててから作業してください。
パッチ即時適用ができない場合の暫定対応
公式の暫定対応は提示されていません。可能な限りTOKEN_HASH_SECRET環境変数に強力な値を設定し、脆弱な初期値「Secre$t」が使われないようにしてください。
さらにネットワークアクセス制御で管理APIへのローカル環境以外からのアクセスを遮断することも有効です。
STEP 5: 修正されたことを確認する
STEP 3 で実行したバージョン確認コマンドを再度実行してください。
期待される出力
Node.js/npm
npm list flowise
出力例:
flowise@3.1.0
判定: バージョンが 3.1.0 以上ならOK。
Node.js/pnpm
pnpm list flowise
出力例:
flowise@3.1.0
判定: バージョンが 3.1.0 以上ならOK。
追加で確認すべきこと
もしNucleiテンプレートが将来提供された場合は、アップグレード後に再スキャンしてください。また、ログや監査記録に脆弱期間中の不審なアクセスやトークン改ざんがないか確認してください。
補足: 悪用観測状況
2026年6月時点で、この脆弱性に関して公開されているPoCコードは確認されていません。悪用の実例やランサムウェア攻撃への利用も報告されていません。
GitHub Advisory Databaseに脆弱性情報はあるものの、攻撃実績はまだ低いと判断されます。ただし、弱い初期値の秘密鍵を知ることで中間的な権限昇格の可能性があるため、運用中のFlowise環境は早めのアップデートが望まれます。
補足: CVSSメトリクス詳細
- AV (攻撃元): Local (ローカル) – 攻撃者はシステムに物理または論理的に近い環境で実行できる必要あり
- AC (攻撃複雑度): High (高い) – 攻撃を成功させるには高度な知識や条件を満たす必要あり
- PR (必要権限): High (高い) – 攻撃者に管理者など高い権限が必要
- UI (ユーザ操作の必要性): Required (必要) – 攻撃を実行するためにユーザーの操作が要る
- S (スコープ): Unchanged (未変更) – 攻撃対象の範囲は単一のコンポーネント内に限定
- C (機密性影響): High (高い) – 機密情報が漏洩する可能性が大きい
- I (完全性影響): Low (低い) – 完全性(データ改ざん)は限定的な影響
- A (可用性影響): None (なし) – サービス停止には影響しない
よくある質問(FAQ)
Q. このCVEに対応するために最低限すべきことは何ですか?
A. STEP 3でバージョン確認を行い、3.0.13以前の場合はSTEP 4で3.1.0にアップグレードしてください。TOKEN_HASH_SECRET環境変数の設定も確認しましょう。
Q. パッチが適用できない場合、どうすればよいですか?
A. TOKEN_HASH_SECRET環境変数に強力な秘密値を設定し、脆弱な初期値の利用を防いでください。ネットワーク制御で管理系APIへのアクセスを制限することも有効です。
Q. 既に攻撃を受けているか確認する方法はありますか?
A. ログに不審なJWTトークン改ざんや異常なユーザーIDアクセスがないか監視してください。公式のIOC(侵害指標)は現時点で公開されていません。
Q. なぜEPSSスコアが重要なのですか?
A. CVSSは脆弱性の技術的深刻度を示しますが、EPSSは「実際に悪用される確率」を表します。両者を併せて見ると優先度判断が正確にできます。
Q. このCVEと類似の脆弱性は他にもありますか?
A. CWE-798に分類されるハードコードされた秘密は過去に多くのソフトウェアで見つかっています。Flowise以外のLLM関連パッケージでも同様の問題が起きる可能性があります。
参考文献
- NVD: CVE-2026-56269
- GitHub Advisory Database: Flowise Weak Default Token Hash Secret
- VulnCheck Advisory
- CISA Known Exploited Vulnerabilities Catalog
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