CVE-2026-70489 Open WebUIの無限ループによるサービス拒否(DoS)脆弱性解説とAI Security対策ガイド

結論
- 危険度: Medium (CVSS 6.5)
- 対象: open-webui >= 0.9.0, < 0.11.0
- 修正: 0.11.0
- KEV: No (NVD Critical由来。CISA KEVには未登録)
タイトルの緊急度プレフィックス(【至急】【最重大】等)の意味
| 表記 | 条件 | 意味 | 対応目安 |
|---|---|---|---|
| 【至急/ランサム悪用】 | CISA KEV登録 + ランサムウェア悪用観測 | ランサムグループが現在進行形で悪用 | 本日中に対応開始 |
| 【至急/重大】 | CISA KEV登録 + CVSS 9.0以上 | 実世界で攻撃観測あり + スコア極めて高い | 本日中に対応開始 |
| 【重大/KEV登録】 | CISA KEV登録(CVSS低またはNVD未反映) | 実世界で攻撃観測あり | 数日以内 |
| 【最重大】 | CVSS 9.5以上(KEV未登録) | 理論上の危険度ほぼ満点、攻撃観測はまだない | 1週間以内に対応計画 |
| 【重大】 | CVSS 9.0〜9.4(KEV未登録) | Critical帯の理論的高リスク | 1〜2週間以内 |
| 【高】 | CVSS 7.0〜8.9(KEV未登録) | High帯のリスク | 計画的に対応 |
| (プレフィックスなし) | CVSS 7.0未満 | Medium以下のリスク | 通常メンテで対応 |
「至急」と「最重大」の違い: 「至急」は CISA(米国政府機関)が 実際に悪用を観測した CVEに付与されます。「最重大」は CVSS スコア上は最高峰だが、まだ悪用観測がない ものです。同じCVSS 9.8でもKEV登録の有無で扱いが変わります。
最終更新: 2026-08-04 | 本記事は公式情報をもとに作成しています。最新情報はベンダー公式アドバイザリを必ずご確認ください。
| STEP | やること | かかる目安 |
|---|---|---|
| STEP 1 | 何が起きているか理解する | 3分 |
| STEP 2 | 急ぎ対応すべきか判断する | 3分 |
| STEP 3 | 自分の環境が対象か確認する | 5分 |
| STEP 4 | 修正を適用する | 環境による |
| STEP 5 | 修正されたことを確認する | 3分 |
STEP 1: 何が起きているか
一言でいうと
CVE-2026-70489はOpen WebUIというセルフホスト型AIプラットフォームの脆弱性です。攻撃者は管理された自動化設定を使い、システムの応答を極端に遅らせて他ユーザーのサービスを妨害できます。LLMゲートウェイやAgent環境を運用する現場で最優先で対応が必要です。
やさしく説明すると
この脆弱性は、自動実行設定で「毎分」や「毎時」のルールを処理するときに起こります。まるで家の玄関の合鍵が何十年分も作られてしまい、誰でもドアを開けられる状態です。実際は鍵を力ずくで大量に試すことで建物の全住人に迷惑がかかってしまう感じです。サービスの使えなくなる問題なので、すぐ直す必要があります。
技術的な原因
この脆弱性はCWE-400(資源管理の不備)とCWE-1333(イベントループのブロッキング)に該当します。自動化スケジューラの再帰的なスケジュール処理で、古い固定日時(2000-01-01)から1インターバルずつ順に次の実行時間を数え上げます。単一の「FREQ=MINUTELY(毎分)」ルールが約25年分のイベントを同期的に列挙し続けます。これがイベントループ(非同期処理をまとめる処理系)を長時間ブロックし、HTTPやWebSocketなど全ユーザーの通信を止めてしまいます。
影響を受けると何が困るか
- LLM Gatewayの可用性低下でAPI応答時間が長くなり、複数ユーザーサービス停止が起こる
- Schedulerがブロックされることでバックグラウンドの自動タスクが遅延または停止
- AI Agent、RAG(情報抽出再利用)パイプラインの運用効率悪化
- CursorやCopilotなどAI駆動コード支援ツールの応答遅延による生産性低下
- インフラ全体のパフォーマンスダウンや障害リスクが増す
もっと詳しく調べたい人へ — 公式情報源マップ
本記事は以下の公式・準公式の情報源から内容を集約しています。一次情報を確認したい場合や英語で詳細を読みたい場合は、各リンクから直接アクセスできます。
| カテゴリ | 情報源 | 言語 | 何が分かるか | リンク |
|---|---|---|---|---|
| 総合 | NVD(米国 NIST) | 英 | 米国政府の脆弱性データベース。CVSSスコア、影響を受けるCPE、参考リンクの総合ハブ。最も網羅的。 | 開く |
| 総合 | MITRE CVE | 英 | CVE採番機関の公式記録。CVE記述の「正本」。NVDより記載が簡潔だが一次情報。 | 開く |
| 総合 | JVN iPedia(JPCERT/CC・IPA) | 日 | 日本のCSIRTが運用する脆弱性対策情報データベース。日本語で概要・対策が読める。掲載がない場合あり。 | 開く |
| 総合 | CISA KEV(悪用観測カタログ) | 英 | 米国CISAが実際に悪用を確認している脆弱性のカタログ。掲載されていれば最優先で対応。 | 開く |
| 総合 | GitHub Advisory Database | 英 | OSSパッケージ(npm/pypi/maven/composer/go等)別の脆弱性アドバイザリ。修正PRへのリンクが豊富。 | 開く |
| 総合 | OpenCVE | 英 | 複数CVEデータベースの集約検索サービス。タイムラインや関連CVEの俯瞰に有用。 | 開く |
| Linux | Red Hat CVE | 英 | Red Hat製品(RHEL/CentOS Stream/Rocky/AlmaLinux系)の影響評価とパッチ状況。 | 開く |
| Linux | Ubuntu Security | 英 | Ubuntu の影響評価。各Ubuntuバージョン(22.04/24.04等)でのパッチ提供状況が一目で分かる。 | 開く |
| Linux | Debian Security Tracker | 英 | Debian の影響評価。stable/testing/sid別のパッチ状況。Debian派生ディストリ利用者向け。 | 開く |
| Linux | SUSE CVE | 英 | SUSE Linux Enterprise / openSUSE の影響評価とパッチ状況。 | 開く |
| 悪用 | Exploit Database | 英 | 公開エクスプロイトのアーカイブ。検出ツールやペネトレーションテストでの参照用。 | 開く |
| 悪用 | Packet Storm Security | 英 | セキュリティアドバイザリ・エクスプロイトの集約サイト。古めの情報も含む。 | 開く |
| 悪用 | GitHub PoC 検索 | 英 | GitHubコード検索でCVE IDを直接検索。野良PoCの早期発見に。 | 開く |
| 悪用 | X(Twitter)検索 | 日英 | 直近の議論やニュースを観測。In-the-wild悪用の早期検知に有用。 | 開く |
| スキャナ | Snyk Vulnerability DB | 英 | パッケージ別の脆弱性詳細と修正バージョン。OSS依存ライブラリ追跡に有用。 | 開く |
| スキャナ | Tenable(Nessus) | 英 | Nessusスキャナでの検出プラグイン情報。検出ロジックの参考に。 | 開く |
| スキャナ | Rapid7(Metasploit/Nexpose) | 英 | Metasploit悪用モジュール、Nexposeでの検出情報。 | 開く |
掲載しているのは無料でアクセスできる情報源のみです。CVEによっては掲載がないサイトもあります(特にJVN iPediaは日本国内で報告された脆弱性のみ掲載)。
STEP 2: 急ぎ対応すべきか判断する
結論: 中
判断根拠
- CVSS v3.1は6.5 (Medium)で、実務的には「システム全体の可用性を妨げるが侵入・情報漏洩はない」ため中程度の重要度
- EPSS(悪用予測スコア)は提供されていません
- ランサムウェアによる悪用は確認されていません
- 公開されたPoCコードも存在しません
- 攻撃はネットワーク経由で、低い権限でも実行可能でユーザ操作不要(管理権限または自動化権限が必要)
- デフォルトでは自動化機能は管理者のみがアクセスできますが、機能を解放すると一般ユーザーも利用可能になりうる状態です
誰が動くべきか
- open-webuiをLLM GatewayやAgentとして運用しているDevOpsやSREチーム
- Agentフレームワークを自作・改造している開発者(LangChain等を利用している場合)
- バイブコーダーでopen-webuiをローカルテストに利用している開発者
- インフラ管理・AIコーディング支援ツールをセットアップしているセキュリティチーム
STEP 3: 自分の環境が対象か確認する
影響を受けるバージョン
| 製品 | 脆弱なバージョン範囲 | 修正版 |
|---|---|---|
| open-webui (pip パッケージ) | バージョン 0.9.0 以上 0.11.0 未満 |
0.11.0 |
バージョン確認コマンド
Python (pip)
pip show open-webui
出力例:
Name: open-webui
Version: 0.10.5
Summary: Open WebUI AI platform
判定: Versionが 0.9.0 以上 0.11.0 未満なら脆弱です
Python (pipで一覧確認)
pip list | grep open-webui
出力例:
open-webui 0.10.5
判定: 表示されたバージョンが 0.9.0以上0.11.0未満なら脆弱
設定確認
当脆弱性は特定の自動化設定「automation recurrence rules」の実行処理による問題です。デフォルトでは管理者のみが自動化機能を利用できます(設定名は USER_PERMISSIONS_FEATURES_AUTOMATIONS)。管理者権限での自動化設定作成が有効かどうかを確認してください。一般ユーザーも利用できる設定になっていればリスクは高まります。
注意: 設定で自動化機能を無効化していれば脆弱性の表面化は抑えられますが、バージョンが対象範囲なら完全に安全とは言えません。
Nucleiテンプレートでの検出
公開Nucleiテンプレートは現在提供されていません。検出はバージョン確認と設定確認で対応してください。
STEP 4: 修正を適用する
パッチ適用
Python (pip)
pip install --upgrade open-webui
出力例:
Successfully installed open-webui-0.11.0
判定: バージョンが 0.11.0 以上になれば修正適用済み
パッチ即時適用ができない場合の暫定対応
公式の暫定対応は提示されていません。以下の対策を検討してください。
- 自動化機能(Automation recurrence)の利用を一時的に停止する
- 管理権限で自動化作成が許可されているか設定を見直す
- サービスのネットワーク隔離やリソース制限を強化し、イベントループが長時間ブロックされないようにする
注意: パッチ適用前に必ずバックアップを取得し、ステージング環境で動作検証を行ってください。ダウンタイム発生計画も検討しましょう。
STEP 5: 修正されたことを確認する
STEP 3で紹介したバージョン確認コマンドをもう一度実行してください。
期待される出力
Python (pip)
pip show open-webui
出力例:
Name: open-webui
Version: 0.11.0
Summary: Open WebUI AI platform
判定: バージョンが 0.11.0 以上ならOK
Python (pipで一覧確認)
pip list | grep open-webui
出力例:
open-webui 0.11.1
判定: バージョンが 0.11.0以上なら安全
追加で確認すべきこと
- 該当環境のログに異常な自動化処理開始やスケジューラ停止、リクエスト遅延がないか監視する
- 運用中のSREツールでイベントループ負荷が下がっていることを確認する
- 公開Nucleiテンプレートが将来出た際は再度検出を実施する
補足: 悪用観測状況
CVE-2026-70489について、公開された攻撃コードや実際の悪用観測は現在ありません。GitHubやExploit DatabaseにPoCやExploitは提出されていません。ランサムウェアによる悪用も確認されていません。現状は「影響はあるが実務上は中リスク」と位置づけられます。
補足: CVSSメトリクス詳細
- AV (Attack Vector:攻撃元): NETWORK – 攻撃者は遠隔からアクセスできる
- AC (Attack Complexity:攻撃の複雑さ): LOW – 特別な状況をほとんど必要としない
- PR (Privileges Required:必要権限): LOW – 低い権限(管理者か自動化権限)が必要
- UI (User Interaction:利用者操作): NONE – ユーザ操作を必要としない
- S (Scope:範囲): UNCHANGED – 影響範囲はシステム内部にとどまる
- C (Confidentiality:機密性): NONE – 機密情報への影響なし
- I (Integrity:完全性): NONE – データ改ざんの影響なし
- A (Availability:可用性): HIGH – サービス停止や遅延を引き起こす
よくある質問(FAQ)
Q. このCVEに対応するために最低限すべきことは何ですか?
A. まずはSTEP 3のバージョン確認を行い、対象バージョンならSTEP 4で0.11.0以上へアップデートしてください。その後STEP 5で正しく修正されていることを確認します。
Q. パッチが適用できない場合、どうすればよいですか?
A. 自動化機能の利用停止や、権限設定の見直し、ネットワーク隔離などの暫定対策を行ってください。詳細はSTEP 4の暫定対応を参照してください。
Q. 既に攻撃を受けているか確認する方法はありますか?
A. ログにスケジューラの異常遅延やイベントループの高負荷、異常な自動化処理を示す記録がないか監視してください。特にパフォーマンス監視ツールのアラートを注意深く確認しましょう。
Q. なぜEPSSスコアが重要なのですか?
A. CVSSは脆弱性の深刻度指標ですが、EPSSは実際に悪用される確率を示します。両方を組み合わせると対応優先度の判断がより正確になりますが、本件はEPSSデータが未提供です。
Q. このCVEと類似の脆弱性は他にもありますか?
A. 本件はCWE-400(資源管理不備)に分類されます。同じくイベントループブロッキングを起こす脆弱性は、他のイベント駆動型AIプラットフォームやLLM Proxyでも潜在的に存在します。継続した監査が必要です。
参考文献
- NVD – CVE-2026-70489詳細
- GitHub Advisory Database GHSA-73cq-mcgh-379c
- Open WebUI v0.11.0 リリース情報
- 修正コミット
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